円錐角膜
25EYE DISEASE
目次
円錐角膜とは?
円錐角膜とは、角膜が前方へ円錐状に突出する疾患です。
角膜は、厚さが0.5ミリほどしかない透明の膜で、通常は半球状の形状をしています。外から入ってきた光線を屈折させるレンズの役割を果たしている部分です。
円錐角膜になると、何らかの理由によってこの角膜が円錐形に突出し、薄くなります。
両眼に発症することが多いのですが、左右の眼で進行に差が見られることもあります。
一般的には10~20歳代前半で発症して進行し、40代頃まで徐々に進行していくことが多いとされています。
症状の進行の仕方は個人差が非常に大きく、中には若い頃にはほとんど進行せず、40代、50代になってから急激に進行するような例もあります。
進行するにつれて、徐々に近視や不正乱視が見られるようになったり、眼鏡などで矯正しても見えづらく感じるようになります。
特に初期段階においては通常の乱視と症状が似ていることから、検査を受けていても円錐角膜であると気づく事ができないケースも見受けられます。
進行性の病気であり、適切な対処・治療をすることなく放置してしまった場合は、大幅な視機能の低下に繋がる危険性があります。
円錐角膜の原因
円錐角膜の原因については、未解明な部分も多く残っています。
現在、主な原因として考えられているものについて紹介します。
原因1:遺伝の影響
円錐角膜は、遺伝的な要因があると考えられています。しかし、その数は多くありません。
発症しやすい素因としては遺伝が関係している可能性があるものの、ほとんどが孤発例です。
まれに家族例の報告もされています。
原因2:性ホルモンの影響
発症しやすい年齢として思春期が多いことから、視神経特有の何らかのきっかけがあるのではないかとも考えられています。
例えば、性ホルモンによる影響がその一例として考えられますが、詳細についてはまだ解明されていません。
原因3:外因性の影響
外因性の影響として、目に対する刺激が関係している可能性が高いです。
例えば、目をこする癖が影響していると考えられています。
アレルギー疾患などで目にかゆみを感じることが多い方などは無意識のうちに目をこする癖がついてしまうことも多く、特に注意が必要です。
目をこすること自体が直接的な原因とはいえませんが、進行とは関係性があるとされています。
慢性的に眼球に対して刺激を与えることも原因の一つとなると考えられているため、コンタクトレンズの装用が影響している可能性もあります。
円錐角膜の症状
円錐角膜を発症すると、以下のような症状が現れます。
症状1:羞明
初期に自覚しやすい症状として挙げられるのが、ものが異様にまぶしく感じる羞明(しゅうめい)です。
光だけではなく、熱によって眼球が痛みを感じることもあります。
外に出た時の太陽の光や、室内では蛍光灯の光が非常にまぶしく感じ、目を開けていられなくなることもあるほどです。
ただ、非常に初期段階の円錐角膜では、羞明の症状はそれほど強くなく、何となく眩しさを感じる程度なので、異常に気づけないこともあります。
症状2:ものが歪んで見える
円錐角膜になると乱視の症状が現れるようになり、これによってものが歪んで見えることがあります。
初期といえる段階よりも、円錐角膜が進行している状態です。
角膜の突出が強く起こり、角膜に濁りが生じていると見え方が歪みやすくなります。
症状3:痛み
コンタクトレンズ装用者の方は、角膜とレンズが擦れて痛みを感じることがあります。
初期症状が乱視と似ていることから、一般的な乱視用コンタクトレンズが処方されるケースが散見されます。
円錐角膜が進行すると、従来使用していたコンタクトレンズは使用出来なくなる可能性が高くなります。
症状4:視力の低下
初期段階においては、視力の低下を実感することが多く、特に暗い場所での視力が著しく低下します。
円錐角膜は、10年から20年ほどかけてゆっくりと進行するケースが多い疾患ではありますが、急激に視力が落ちることも珍しくありません。
視力低下によってそれまで使っていた眼鏡やコンタクトレンズが合わなくなり、眼科で検査を受けたところ円錐角膜が発見される、というケースもあります。
急激な視力低下の原因となるのは、角膜の突出が強くなったことによって角膜内のデスメ膜が破裂し、角膜内に水がたまってしまった場合等です。
デスメ膜とは角膜実質層の下にある薄い膜で、破裂してしまうと再び元に戻ることはありません。角膜内に水が溜まると、急性水腫と呼ばれる角膜が白く濁り、著しく視力が低下します。
この段階になると、円錐角膜の中でも中期に該当します。急性水腫が発生すると、乱視の症状も自覚される方が多くなります。
急性水腫を発症しても、数週間から数ヶ月程度で軽快するケースもあります。
しかし、角膜混濁が強く残ったり、視力を含む視機能に障害をきたしてしまったような場合には、角膜移植等の治療方法も検討されます。
円錐角膜の治療方法
円錐角膜は進行性の病気であることから、できるだけ早期の段階で治療に取り組むことが重要です。
円錐角膜は、点眼薬などによる治療は行えません。
治療法としては、以下のような方法があります。
治療法1:眼鏡やソフトコンタクトレンズによる矯正
症状が初期の軽い段階であれば、眼鏡やソフトコンタクトレンズで矯正ができます。
低下している視力を補う目的と相俟って、眼鏡やソフトコンタクトレンズで矯正しながら経過観察を行うケースは多く見られます。
ただし、症状が進行すると本治療法では改善が期待出来なくなります。
治療法2:有水晶体眼内レンズ
眼球内に有水晶体眼内レンズを移植することにより、円錐角膜による乱視を矯正する治療法もあります。
ただし、保険適用ではなく、合併症等のリスクも考慮する必要があります。
治療法3:ハードコンタクトレンズによる矯正
円錐角膜の症状がひどくなると、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正では対応できないため、ハードコンタクトレンズによる矯正が必要となります。
乱視には、一定方向に角膜や水晶体が歪む正乱視と、角膜表面が不規則に歪む不正乱視があります。
正乱視の場合はソフトでもハードでも矯正可能ですが、不正乱視の場合はハードコンタクトレンズでしか矯正ができません。
円錐角膜は不正乱視が進行する疾患であるため、進行するとハードコンタクトレンズを用いて矯正していくことになります。
ただし、ハードコンタクトレンズによる矯正はその段階の見え方を補うものです。そのため、症状の進行を止める効果は期待できません。
治療法4:円錐角膜用特殊コンタクトレンズによる矯正
円錐角膜用に作られた特殊なコンタクトレンズを使った矯正治療です。
円錐角膜のコンタクトレンズを使った治療は、ハードコンタクトレンズを使用する方法が最も一般的です。
しかし、ハードコンタクトレンズでも十分な視力が出ない場合、円錐角膜用特殊コンタクトレンズが必要になることもあります。
治療法5:角膜クロスリンキング
長波長紫外線に対するリボフラビン(ビタミンB2)の感受性を利用した、角膜クロスリンキングという治療法もあります。
一定の角膜の厚さが必要であったり、現症状の改善よりも進行を防ぐ目的である事、保険適用ではない事など、誰でも適応となるわけではありません。
治療法6:角膜内リング
円錐角膜の突出を抑えるため、角膜の中に専用のリングを埋め込む治療法です。
角膜を平坦化する事で視力や乱視の矯正を行います。保険適用とはなりません。
治療法7:角膜移植
ハードコンタクトレンズによる矯正等では十分な矯正が出来なくなった場合、角膜移植も検討されます。
円錐角膜だからといって、必ずしも角膜移植が考慮されるわけではありません。症状が進んでおらず、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正で視力が出ている場合はなおさらです。
ハードコンタクトレンズで矯正ができず、日常生活にも支障をきたしているような場合や、角膜の状態が良くない場合等に選択肢となります。
異常を感じたら早い段階で診察を受けることが大切
円錐角膜の原因・症状、治療法について解説しました。
進行性の疾患であるため、早い段階で気づいて適切な治療を開始する事が重要です。
また、過去に乱視と判断されていたとしても、現在の円錐角膜が見落とされているケースも考えられます。まずは眼科を受診しましょう。
特に積極的な治療が必要なケースでは、適切な診療機関等への紹介も行わせて頂きます。