医療法人瞳潤会 田村眼科

多焦点眼内レンズ

6MULTIFOCAL INTRAOCULAR LENS

明石イメージ

白内障手術で、濁った水晶体を取り除き、眼に挿入する眼内レンズには、単焦点レンズ(保険診療)、多焦点レンズ(選定療養対応)、多焦点レンズ(自由診療)を採用しています。いずれのレンズでも、乱視の矯正は可能です。

多焦点レンズの特徴

【画像】光の性質

光の性質(屈折や回折)を利用して、複数個所に焦点を結ぶことができます。
遠くと近く、遠くと中間、またはそれ以上に対して焦点を結べるように設計されています。

○ メリット

  • 遠くも近くも眼鏡なしで見えることが多い
  • 遠くと近くを見比べられる
           

× デメリット

  • 夜間や暗い場所で、街灯や車のライトなどがまぶしかったりにじんで見える(通常は日常生活に影響しない程度)
  • 薄暗い場所では、文字などが見えにくいことがある
  • 細かい文字などを見る際には、老眼鏡が必要になることがある
  • 視力の安定までに3〜6ヶ月かかることがある
  • 費用は、基本自己負担となる
  • コントラスト感度の低下
  • グレア・ハローの発生
  • 夜間運転時に見づらいなどの症状
  • 少数例であるがwaxy vision(モワッとした見え方)などの症状

多焦点レンズに向いている方

  • 眼鏡から解放されたいと考えている
  • 見え方に適応するのに数ヶ月かかるが容認できる
  • ある程度の光のにじみを容認できる
  • 自費診療を容認できる
  • 術後になるべく眼鏡装用をせずに生活したいと希望する方
  • 多焦点眼内レンズのメリット・デメリットを理解できる方

多焦点レンズに向いていない方

  • 瞳孔径が2.5mm以下または瞳孔が変形している
  • 性格が完璧主義または神経質
  • 夜間の運転、手元の作業が多い
  • 緑内障や黄斑変性などの眼合併症がある
  • 中等度の近視(近くの見え方が落ちる可能性あり)
  • 術後視機能に影響を与える角膜疾患・ドライアイ・緑内障・ぶどう膜炎・網膜疾患・視神経疾患などの眼合併症を有する方
  • 弱視、Zinn 小帯脆弱、重度の小瞳孔、白内障を有しない症例における、屈折矯正を目的とした refractive lens exchange
  • その他、医師が非適応と判断したもの

多焦点眼内レンズの種類による長所や短所

【画像】多焦点レンズの特性イメージ

回折型

レンズ表面に回折格子(細かい溝)を切ってあり、これによって光を遠方、近方に振り分けて、遠近の焦点を合わせています。現在一般的に多く使われている多焦点眼内レンズです。

長所

  • 遠方、近方共に見やすい。
  • 光が入る配分が遠近半分ずつとなるので、瞳の大きさで見え方が左右されることがなく、瞳孔の小さい高齢者にも安心して使用できます。

短所

  • 回折格子での光の散乱のため、光学的損失(近方にも遠方にも焦点を結ばない光の量)があり、コントラスト感度がやや劣ります。
  • 夜間の光のにじみ(ハロー・グレア)を感じることがあります。(近年は改善されたレンズも登場しています)

屈折型

レンズ部分が同心円状に遠方用、近方用と屈折力の異なる領域が交互に繰り返される屈折型の多焦点眼内レンズ。3つのゾーンに分かれています。

長所

  • 中央部から、遠、近、遠の3層構造になる屈折型眼内レンズです。近用部の加入度数は3Dです。屈折型の特徴である解像度の良さを得つつ、移行部を少なくすることにより、ハロー・グレアが軽減されています。

短所

  • 中央が遠用ですので、瞳孔径が小さくなる明るい場所や高年齢では実質的に単焦点レンズとなり、近く用の眼鏡が必要となってきます。

焦点深度拡張型

焦点深度(見える幅)を広げるように設計された、新しいコンセプトの眼内レンズです。レンズ光学部の回折溝の形状や間隔、高さなどを最適化したり、球面収差の原理を利用する等の工夫が凝らされています。

長所

  • 遠方から中間距離まで明視域の落ち込みが少なく、ヒト水晶体眼の見え方に近づけられています。また、コントラスト感度の向上やハロー・グレアの軽減も報告されています。

短所

  • 近方視がやや弱いとされており、近くをはっきり見るためには眼鏡が必要です。

その他多焦点眼内レンズの種類や特性

Miniwell Ready

ミニウェル・レディー(Miniwell Ready)の見え方イメージ

ミニウェル・レディ(Miniwell Ready)は、イタリアのSIFI MedTech社で開発された、焦点深度拡張型(EDOF)の眼に挿入する多焦点眼内レンズです。

限られた範囲にピントが合う従来の眼内レンズとは異なり、遠方から近方まで比較的広い範囲で見やすくなります。一方で、近方の見え方はやや弱めです。

また、適応についてはいくつか条件があります。

FINEVISION

ファインビジョン(FINE VISION)の見え方イメージ

「ファインビジョン(FINE VISION)は、PhysIOL社(ベルギー)から2011年に発売された、遠見と近見に加え中間距離にも焦点が合う「3焦点型」の眼に挿入するトリフォーカルレンズです。ハロー・グレアは少な目ですが、夜間運転時等には自覚される事があります。

また、適応についてはいくつか条件があります。

多焦点眼内レンズ特有の合併症

ぼやけ・にじみ・夜間の光のにじみ(ハロー・グレア)

【画像】通常の見え方とハロー・グレアの見え方の違い

全体的に少しぼやけて見えたり、多少にじんで見える場合があります。特に、夜間や暗い場所、強い光源を見た場合などでは、街灯や車のライトが手術前よりもまぶしかったり(グレア)、にじんで見えたり(ハロー)、明るい場所に比べて視力の低下を感じることがあります。

これらの症状は、手術後の時間の経過とともに慣れてくる場合が多いですが、個人差があります。また、単焦点と比べて、多焦点眼内レンズの方がハロー・グレアは起きやすいとされています。

視力の安定までには、3ヶ月程度かかることもあります。症状がひどく日常生活に影響がでる場合には、単焦点レンズに入れ替えることがあります。


コントラストの低下

【画像】コントラストによる画像の変化

一般的に、コントラストの感じ方は加齢に従って徐々に低下します。
低コントラスト状況にあると「視力は良くても見えにくい」といった症状になります。一般的には、単焦点と比べると多焦点眼内レンズの方がコントラストは低めとされています。

視力の限界

多焦点眼内レンズの場合、個人差はありますが、細かい作業時や小さい文字などを見る際には老眼鏡が必要になることがあります。中間が見えにくい場合もあります。

レンズの変更

水晶体嚢が破れたり、チン小帯が切れると多焦点眼内レンズが入れられない場合があります。 その場合は単焦点眼内レンズヘの変更もありますのでご了承下さい。

眼内レンズの種類

白内障手術では通常眼内レンズを挿入します。
患者さんの目的、ライフスタイル等に応じて選定を行います。

白内障手術用の眼内レンズには、単焦点レンズ(モノフォーカルIOL)、乱視用単焦点レンズ(トーリックIOL)をはじめとして、遠・中・近のうち2~3箇所に焦点が合う多焦点レンズ、焦点深度拡張型の多焦点レンズ等があります(いずれも乱視矯正対応)。
それぞれの眼内レンズには、様々なメリットとデメリットがあります。本ページを最後までご確認頂いた上で、ご不明な点等あればお気軽に医師・スタッフまでお問い合わせください。

選定療養を希望される場合は、通常の手術・診療費とは別に、選定療養に係る費用を負担頂く必要があります。費用の詳細については下表をご参照ください。(選定療養についての詳しい説明はこちらをクリックしてご覧ください)

多焦点レンズ

レンズ名 【画像】多焦点眼内レンズEDOFタイプ

AMO社 TECHNIS Symfony®(テクニス シンフォニー)

(選定療養対応)

レンズの種類

エシェレット回折型

選定療養

費用
(乱視非対応)

選定療養に係る費用

両眼 372,480円 / 片眼 186,240円

(通常の手術・診療費用を除く)

費用
(乱視対応)

選定療養に係る費用

両眼 412,480円 / 片眼 206,240円

((通常の手術・診療費用を除く)

焦点

遠方〜中間距離(∞〜50cm)

レンズの度数

0.5D刻み

乱視矯正

◯(乱視対応レンズの場合)

製品の特徴

遠方から中間距離まで落ち込みが少ない自然な見え方を実現。近方は眼鏡が必要。

レンズ名 【画像】多焦点眼内レンズ2焦点タイプ

Alcon社 アクリソフ®IQ ACTIVE FOCUS™(アクティブフォーカス)

(選定療養対応)

レンズの種類

アポダイズ回折型

選定療養

費用
(乱視非対応)

選定療養に係る費用

両眼 372,480円 / 片眼 186,240円

(通常の手術・診療費用を除く)

費用
(乱視対応)

選定療養に係る費用

両眼 412,480円 / 片眼 206,240円

(通常の手術・診療費用を除く)

焦点

遠、中2焦点(∞、50cm)

レンズの度数

0.5D刻み

乱視矯正

◯(乱視対応レンズの場合)

製品の特徴

遠方~中間距離までの見え方を対策・改善し、従来品よりもハロー・グレアを低減。近方は眼鏡が必要。

レンズ名 【画像】多焦点眼内レンズ遠中近3焦点タイプ

Alcon社 Clareon® PanOptix® Trifocal(クラレオン パンオプティクス)

(選定療養対応)

レンズの種類

回折型レンズ

選定療養

費用
(乱視非対応)

選定療養に係る費用

両眼 592,480円 / 片眼 296,240円

(通常の手術・診療費用を除く)

費用
(乱視対応)

選定療養に係る費用

両眼 692,480円 / 片眼 346,240円

(通常の手術・診療費用を除く)

焦点

遠・中・近3焦点(∞、60cm、40cm)

レンズの度数

0.5D刻み

乱視矯正

◯(乱視対応レンズの場合)

製品の特徴

遠方から近方まで幅広い距離に焦点が合うため、多様なライフスタイルに適応。

レンズ名 【画像】多焦点眼内レンズ連続焦点タイプ

AMO社 Technis Synergy® (シナジー)

(選定療養対応)

レンズの種類

連続焦点型(EDOF + 回折型)

選定療養

費用
(乱視非対応)

選定療養に係る費用

両眼 572,480円 / 片眼 286,240円

(通常の手術・診療費用を除く)

費用
(乱視対応)

選定療養に係る費用

両眼 672,480円 / 片眼 336,240円

(通常の手術・診療費用を除く)

焦点

連続焦点(∞ ~ 33cm)

レンズの度数

0.5D刻み

乱視矯正

◯(乱視対応レンズの場合)

製品の特徴

Technis multifocalとsymfonyの技術を組み合わせ、遠方から33cmまでの近方視を実現。

レンズ名 ファインビジョン(Fine Vision)

FineVision

PhysIOL社 FINE VISION®(ファインビジョン)

レンズの種類

回折型レンズ

選定療養

X

費用
(乱視非対応)

自費

両眼 900,000円 / 片眼 450,000円

(術後約2ヶ月迄の検査・投薬費用を含む)

費用
(乱視対応)

自費

両眼 940,000円 / 片眼 470,000円

(術後約2ヶ月迄の検査・投薬費用を含む)

レンズの度数

0.5D刻み

乱視矯正

製品の特徴

遠・中・近の3焦点にピントが合う事により眼鏡の装用頻度が減る。明瞭な近方視の為には眼鏡が必要。輸入品のため納期がかかる。

レンズ名 ミニウェル・レディ(Mini Well Ready)

MiniWell Ready

SIFI MedTech社 MINI WELL READY®(ミニウェル・レディ)

レンズの種類

焦点深度拡張型(EDOF)

選定療養

X

費用
(乱視非対応)

自費

両眼 900,000円 / 片眼 450,000円

(術後約2ヶ月迄の検査・投薬費用を含む)

費用
(乱視対応)

自費

両眼 940,000円 / 片眼 470,000円

(術後約2ヶ月迄の検査・投薬費用を含む)

焦点

遠方~近方距離(∞~40cm)

レンズの度数

0.5D刻み

乱視矯正

製品の特徴

遠方~近方まで幅広く対応。ハロー・グレアが比較的少ない。明瞭な近方視の為には眼鏡が必要。輸入品のため納期がかかる。

多焦点レンズの特徴

光の性質(屈折や回折)を利用して、複数個所に焦点を結ぶことができます。
遠くと近く、遠くと中間、またはそれ以上の焦点を結べるように設計されています。

○ メリット

  • 遠くも近くもメガネなしで見えることが多い
  • 遠くと近くを見比べられる

× デメリット

  • 夜間や暗い場所で、街灯や車のライトなどが、まぶしかったりにじんで見える(通常は日常生活に影響しない程度)
  • 薄暗い場所では、文字などが見えにくいことがある
  • 細かい文字などを見る際には、老眼鏡が必要になることがある
  • 視力の安定までに3〜6ヶ月かかることがある
  • 費用は、基本自己負担となる
  • (日本眼科学会より)コントラスト感度の低下、グレア・ハローの発生、夜間運転時に見づらいなどの症状、少数例であるがwaxy vision(モワッとした見え方)などの症状

多焦点レンズに向いている方

  • メガネから解放されたいと考えている
  • 見え方に適応するのに数ヶ月かかるが容認できる
  • ある程度の光のにじみを容認できる
  • 自費診療を容認できる
  • (日本眼科学会より)白内障による視機能障害を有し術後になるべく眼鏡装用をせずに生活したいと希望するもの、多焦点眼内レンズのメリット・デメリットを理解できるもの

多焦点レンズに向いていない方

  • 瞳孔径が2.5mm以下または瞳孔が変形している
  • 性格が完璧主義または神経質
  • 夜間の運転、手元の作業が多い
  • 緑内障や黄斑変性などの眼合併症がある
  • 中等度の近視(近くの見え方が落ちる可能性あり)
  • (日本眼科学会より)術後視機能に影響を与える角膜疾患・ドライアイ・緑内障・ぶどう膜炎・網膜疾患・視神経疾患などの眼合併症を有するもの、弱視、Zinn 小帯脆弱、重度の小瞳孔、白内障を有しない症例における,屈折矯正を目的とした refractive lens exchange、その他,医師が非適応と判断したもの