弱視
26EYE DISEASE

目次
弱視とは?
弱視(じゃくし)とは、眼鏡やコンタクトレンズなどを用いても十分視力が上がらない状態のことをいいます。
ただ単に、目が悪いからといって、弱視とは限りません。一般的に、眼鏡をかけても視力が1.0に届かない状態のことを弱視といいます。
一方で、例え裸眼では0.2、0.3程度の視力しかなかったとしても、眼鏡をかけて1.0以上になれば、弱視とはいいません。
弱視の原因
弱視の主な原因は、斜視によるもの、屈折異常によるもの、不同視によるものなどです。
原因1:斜視弱視
斜視(しゃし)とは、左右の眼の向きがずれている状態のことをいいます。
片方の目は正面を向いているのに、もう片方の目は外側や内側を向いている状態です。
斜視の症状が現れていない方の視力は良好なのが特徴です。
斜視状態になると、網膜の中心部分である中心窩でものを見ないことから、視力が育ちません。そのため、弱視になります。
原因2:屈折異常弱視
屈折異常とは、正常な位置とは異なる位置で焦点を結んでしまうために、うまくピントが合わない症状のことをいいます。
代表的な屈折異常として知られるのは、遠視や近視、乱視で、中でも弱視の原因として多いのは遠視です。
遠視は、遠くのものだけではなく、近くのものにもピントが合いにくい症状のことをいいます。
どこを見てもぼやけてしまうことから、視力が育たず、弱視になることがあります。
一方、近くにピントが合いやすい近視については、近くのものは見えるため弱視にはなりにくいです。
ただ、近視だったとしても症状が強く出ている場合は弱視となります。
原因3:不同視弱視
不同視弱視(ふどうしじゃくし)とは、片目のみ遠視・近視・乱視の症状が強く出てしまうことをいいます。
症状が出ている方の目は見えにくくなるため、無意識のうちに見やすい方の目のみを使うようになります。
片目は正常に見えているため、ものが見えにくい状態であるとし、周囲の人が気づきにくいです。
弱視の症状
弱視の症状として、以下のようなものが現れます。
子どもの視力障害にいち早く気づくためにも、参考にしつつチェックしてみましょう。
症状1:目を細めてものを見る
ものを見る際、目を細めるようなことがあれば何らかの視力障害が起こっている可能性があります。
特に可能性が高いのが弱視です。目が悪い人がものを見る際に目を細めることがありますが、これは目を細めることによってものがはっきり見えるようになるからです。
見たいものにピントが合わず、ぼやけてしまうのは焦点が網膜の正しい位置とずれて結ばれていることが関係しています。
多少ピントが合わなくても認識はできるのですが、目を細めることにより網膜に焦点が合いやすくなります。
普段から子どもが目を細めてものを見るようなことがあれば、そうしないとものが見えにくい状態になっている可能性を疑ってみてください。
症状2:ものに近付いて見る
一般的な距離よりも近付いてものを見る場合、弱視の可能性があります。
なお、一口に弱視といっても個人差が大きいため、どの程度近づくかは差があります。
症状3:片方の目を覆って見る
ものを見る際に、片方の目を覆って見ることがある場合は、弱視の場合があります。
片方の目に屈折異常などが強く出ている場合、左右の目で見え方が異なります。
片目を隠すことにより見えやすい状態を作っている可能性を疑ってみてください。
症状4:左右の目が異なる方向を向いている
左右の目が異なる方向を向いているのは、斜視弱視の場合にみられる症状です。
左右の目で見ている方向が異なるため、気づきやすいといえます。
ただし、斜視の中でも症状が軽度であった場合、ほとんど違いがわかりません。
症状5:無症状
弱視だからといって、必ずしも周囲から確認できる症状が現れるとは限りません。
特に片目のみに症状が現れる不同視弱視の場合、もう片方の目は正常に見えているため、周囲から見て気づけないことがあります。
そのため、片眼ずつの視力検査などを行った際に発覚することが多いです。
弱視の治療方法
子どもの弱視治療は、なるべく早いタイミングで取り組むことが重要とされています。
たとえば、遠視や近視といったものが原因で発生する屈折異常が原因で起こっている弱視の場合、視機能の発達が完成するまでに治療することが大切です。
年齢でいうと、6歳頃までとなります。その後は治療が難しくなっていくことが多いです。
治療法としては、以下のようなものが挙げられます。
治療法1:眼鏡やコンタクトレンズによる矯正
基本的な治療方法は、眼鏡を使った方法です。弱視治療用の眼鏡を用いて治療を行っていきます。
特に、眼鏡を嫌がる小さな子どもに眼鏡をかけるように促すのはかわいそうと感じる方もいるかもしれません。ですが、視機能発達のための治療であり、薬と同様の意味を持つものです。
子どもとよく話をし、眼鏡の必要性や効果などについても説明して、理解を深めておくことが欠かせません。
眼鏡による矯正では、見たいものにピントを合わせる治療ができます。
眼鏡をかけた直後からすぐにものが見えるようになるわけではなく、しばらく時間がかかります。
効果を十分に発揮するため、起きている間はずっと眼鏡をかけ続けることが大切です。
コンタクトレンズによる矯正も可能ですが、基本的には自身でコンタクトレンズのケアができる年齢の方が対象となります。そのため、小さな子どもの弱視矯正としては眼鏡の方が適していることが多いです。
治療法2:健眼遮閉
片方の目に強く遠視・近視・乱視が出てしまう不同視弱視の場合に行われるのが、眼鏡による治療のほか、健眼遮閉です。
健眼遮閉とは、通常に見えている方の目を一定時間遮閉する(見えなくする)方法のことをいいます。
このケースでは視力が良い側と悪い側で差が大きいために弱視になっているため、視力の悪い目のみを積極的に使うことにより、発達を促す治療法です。
遮閉の方法はいくつかありますが、皮膚に「アイパッチ」と呼ばれる遮閉シールを貼る方法が一般的です。
遮閉シールやアイパッチには、子どもが抵抗なく使えるような、かわいらしいイラストが書かれたようなものもあります。
中には、眼鏡やアイパッチを嫌がる子どももいますが、そういった場合に使われるのがアトロピンと呼ばれる点眼薬です。アトロピンを点眼すると見え方がぼやけるので、片方の目のみ眼帯をしているのと同じ状態を作れます。
片方の目を遮閉した状態で塗り絵やゲームなどをすることによって、遮閉されていない目が積極的に使われ、治療効果の向上が期待できます。
弱視になっている目をできるだけたくさん使うトレーニングなので、子どもが夢中になって取り組めることを選択するのがポイントです。
遮閉する時間については、子どもの年齢や視力などに合わせて選択することが大切です。
1日3時間のみ行うこともあれば、1日中行うこともあります。
治療法3:眼鏡とアイパッチを組み合わせた方法
斜視弱視の場合は、眼鏡とアイパッチを組み合わせた矯正方法で治療に取り組んでいくことがあります。
遠視や乱視といった症状がある場合は、それを矯正するための眼鏡を作ります。
次に、視力が良い方の目にアイパッチなどの遮閉シールを貼る方法です。また、眼鏡に装着するタイプの布製の遮閉具もあります。
なお、遮閉の期間は、弱視の程度によって変わり、最短でも半年程度、長いと3年程度です。
ただ、治療を続けても視力が1.0に達さないと判断した場合は、中断することもあります。
アイパッチを使った方法は効果的ではありますが、粘着部分が皮膚に直接触れることもあり、かゆみやかぶれが出てしまうことも少なくありません。
治療法4:手術による斜視治療
斜視が原因で弱視になっている場合、手術による斜視の治療も選択肢の一つです。
目の奥には外眼筋と呼ばれる目を動かす筋肉がついており、この筋肉を施術によってずらすことで斜視改善を図る治療法です。
事前に詳しい検査を行い、眼位のズレや外眼筋の働き、屈折の検査、さらに両眼視機能といったものを調べます。
手術は成人の場合だと基本的に局所麻酔ですが、局所麻酔での手術が難しい乳幼児や学童期以下の場合は全身麻酔で行うのが一般的です。
日帰りでの手術となりますが、全身麻酔が必要になる場合は入院を伴うことがあります。
弱視は検査で判断が可能
小さな子どもの場合、自身が弱視であることに気づけていないケースも珍しくありません。
子どもの場合は早期に治療を開始することが重要ですし、成人の弱視についてもこれ以上視力を低下させない対応が必要です。
弱視については、詳しい検査をすることで判断が可能なので、一度、田村眼科へご相談ください。必要に応じて適切な医療機関への紹介も行っております。