高血圧網膜症
16EYE DISEASE
目次
高血圧網膜症とは?
高血圧網膜症とは、血圧が高くったことにより、網膜が損傷を受けてしまう病気のことをいいます。網膜は、カメラで言うフィルムにあたる組織で、眼球の後面一番内側の薄い膜です。厚さは0.1~0.4mm程度しかなく非常に薄い組織です。
網膜はものを見る際に欠かせない重要な組織であり、瞳から入った光は網膜で焦点を結びます。そして視覚は、網膜から受け取った光の強さ・色といった情報を、視神経を通して脳に送ることによって成り立っています。
そのため、網膜が損傷を受けてしまった場合、視機能に関する様々な問題が起こります。
高血圧網膜症の原因
高血圧網膜症は、何らかの原因によって血圧が高くなり、網膜が損傷を受けて発症する疾患です。
以下では、その原因について解説します。
原因1:高血圧
血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈を流れる際、内側から血管を起こす力のことをいいます。この血圧が高い状態が高血圧です。
血圧を測るタイミングによっても変わるため、たまたま計ったタイミングで血圧が高かったからといって高血圧とは判断できません。繰り返し測っても正常より高い状態が高血圧です。
心臓の収縮で最高の血圧に達した時の最高血圧が140mmHg以上、あるいは最低時の最低血圧が90mmHg以上だと高血圧と診断されます。
高血圧の原因としては、肥満、過度の飲酒やストレス、運動不足、自律神経の異常、喫煙などが挙げられます。また、塩分は血流量を増加させる要因になることから、塩分の摂りすぎも高血圧の大きな原因です。
原因2:高血圧による網膜血管の損傷
高血圧の合併症として現れるのが、高血圧網膜症です。高血圧になると、血管は少しずつ厚く、硬くなり、弾力が失われます。すると血管の内径が狭くなってしまい、網膜へ十分な量の血液を供給できない状態となります。
網膜が正常に働くために、血液の供給は欠かせません。十分な量の血液を供給できなくなってしまった場合、血液が不足している部分に小さな島状の損傷が生じます。
症状が進行した場合、網膜の中に出血や浮腫が生じ、高血圧性網膜症を引き起こしてしまいます。
高血圧網膜症の症状
高血圧網膜症になった場合、どのような症状が現れるのか解説します。一つのみの症状が現れることもあれば、複数の症状が同時に現れるケースもあります。
症状1:無症状
特に初期の場合、自覚できるような症状はほぼありません。そのため、高血圧網膜症が悪化しなければ気づけない方が多いです。
高血圧網膜症の大きな原因である高血圧そのものも、初期の自覚症状はあまり認められません。自覚症状が見られるようになるのは、高血圧が進行した状態です。症状が重くなった場合、頭痛やめまいのほか、肩こりなどの症状を感じる方がいます。
また、体調不良時などにも表れやすい症状であることから、高血圧と結びつけて考えられない方も多いようです。普段から血圧を測るように努めたり、定期的に病院で検査を受けたりすると良いでしょう。
症状2:視力低下
多くの方が異常に気づきやすいのが、視力の低下を自覚したタイミングです。網膜の出血や、むくみなどが原因で視力が低下することがあります。
出血が起こる箇所によっても現れる症状が異なるのですが、網膜中心にある黄斑に出血が起こった場合は、著しい視力低下が見られます。
症状3:霧視
霧視(むし)とは、ものがかすんで見えてしまう症状のことで、高血圧網膜症の症状の一つとして挙げられます。目のかすみから異常に気づく方もおり、かすみは視力低下に繋がります。
症状4:視野欠損
視野欠損とは、視野が欠ける症状のことをいいます。視野の中心や周辺に、ものが映らない状態となります。
特に視野の周辺から徐々に欠け始めた場合、変化に気づくのが遅れ、対応が後手に回ってしまうことがあります。
高血圧網膜症の治療方法
たまたま眼科を受診したタイミングで高血圧網膜症であることがわかることもあります。それほど病状がひどくない場合、まずは定期検診を行いながら経過を観察します。
ただし、高血圧網膜症は網膜動脈閉塞症や虚血性視神経症、網膜静脈閉塞症など、視力が著しく低下する病気の原因になり得る疾患です。
そのため、これら疾患が認められるような場合には積極的な治療を検討します。治療を行う場合、以下のような方法で行われます。
治療方法1:レーザー光凝固術
網膜光凝固術とも呼ばれるもので、特定の波長のレーザー光を照射することにより、網膜を凝固させる治療法です。網膜を凝固させることにより、病気の進行を抑える効果が期待できます。
具体的にどういったレーザーを使って、どのような治療が行われるのかは、症状によって異なります。例えば、網膜の細胞に刺激を与えるものや、焼き固めるものなどが代表的です。
治療にかかる期間についても、症状によって異なります。一日のみでは治療が終了せず、数回に分けて行わなければならないこともあります。
なお、レーザー治療ではあくまで病気の治療と進行の阻止が目的であるため、視力回復の効果は期待できません。そのため、視力が悪化してからではなく、適切なタイミングでの治療が必要です。
治療はそれほど長くかからず、レーザー自体は5~10分程度の照射となります。痛みを感じる場合は麻酔を追加したり、相談しながら日帰りで行える治療です
治療方法2:硝子体手術
高血圧網膜症の症状が進行して、硝子体出血が起こってしまうと、手術が必要となる場合があります。
硝子体とは、眼球の内部の大部分を占めているゼリー状のものです。眼球の形状を丸く保つ役割があるほか、光を屈折させるなどの役割を持ちます。
高血圧網膜症により硝子体に異常が起こってしまった場合、ものを見た際に霧がかかったように見えたり、細かい文字が見えづらくなったりするなどの視力障害が起こることがあります。
硝子体自体に血管はないため、硝子体から出血することはありません。ですが、目の奥などから出血が起こり、それが硝子体内に蓄積すると、取り除くために手術が必要です。
硝子体手術にはいくつかの方法がありますが、網膜剥離が見られる場合は、硝子体の出血している箇所を取り除き、剥がれた網膜を修復するための治療を行います。
網膜剥離が起こっていない場合は、レーザー光凝固術を用いて焼き固める方法が一般的です。
硝子体手術の具体的な内容については、こちらの「硝子体手術の内容と注意点」のページをご覧ください。
治療方法3:高血圧の改善
高血圧網膜症は高血圧であることが原因で発症するため、高血圧そのものを改善することが重要です。
高血圧の改善方法にはいくつかありますが、まずは食事に注意することが重要です。血圧を大きく上げる原因である塩分については、1日6グラム未満が理想とされています。
普段から塩辛いものを食べていたり、調味料をたくさん使う料理が好きだったりする方は塩分の摂取量が過剰になりやすいと言えます。どの程度塩分を摂取しているか一度確認してみると良いでしょう。
他にも、野菜類や魚(魚油)を多く食べるように心がける、コレステロールや飽和脂肪酸の摂取は控えるなどの注意も必要になります。
アルコールの取り過ぎも良くないため、節酒も効果的です。普段から大量に飲酒している方は、飲酒量を減らすことにより高血圧の改善が期待できます。
特に女性は男性よりもアルコールを分解する力が弱いとされているので、男性以上にお酒を控えることが重要です。
それから、適正体重の維持を目指すことも欠かせません。肥満体型の方は高血圧になりやすいため、適度な食事制限や運動などにより、肥満解消を目指す必要があります。
短期の減量計画は達成が難しくなるため、長い目で見て行うことが重要です。
高血圧は高血圧網膜症以外にも、脳出血や脳梗塞、くも膜下出血など、命と関わる重篤な病気とも深く関わっています。高血圧を改善させることによりこれらの病気リスクも抑えられるので、改善に取り組むことをおすすめします。
焦らずにまずは眼科を受診
高血圧網膜症の特徴や症状、治療法などについて紹介しました。高血圧網膜症と診断されたとしても、初期の段階であれば生活に支障をきたすような症状は現れません。
ただし、症状が悪化した場合には視力低下などの恐れもあるため、一度眼科を受診したほうが良いでしょう。田村眼科でも詳細な検査や治療を行っていますので、ご相談ください。
当院では、高度な専門性を有する医療スタッフによる医療の提供を通じて、白内障を主体としつつ数多くの目の病気への治療に対応しております。
特に白内障の日帰り手術に注力しており、多焦点眼内レンズも豊富に取り扱っております。その他硝子体、眼瞼下垂、涙道、緑内障等の治療についても日帰り手術が可能です。
また、明石市のみならず近隣地域(神戸市西区、神戸市垂水区、淡路市等)にお住まいの患者さんからも多くの治療のお問い合わせをいただいております。
目の病気にお悩みの方や、治療をご検討中の方はぜひ一度兵庫県明石市の田村眼科までご来院ください。