網膜動脈閉塞症
18EYE DISEASE
目次
網膜動脈閉塞症とは?
網膜動脈閉塞症とは、網膜にある動脈血管に詰まりが生じることにより、視力低下を引き起こす疾患です。
詰まりが生じると、網膜に行き渡る血液量が低下して光を感受できなくなることから、重度の視力低下が引き起こされます。
網膜への血液量が不足すると短時間で細胞が壊死するため、緊急の処置を要します。
発症から約2時間以内に緊急処置が行えれば、視力が回復する可能性が高まると言われています。
そのため、網膜動脈閉塞症ではとにかく早期の治療が必要です。
網膜動脈閉塞症の原因
原因は主に次の2つです。
原因1:動脈硬化
この疾患は主に動脈硬化により引き起こされます。
何らかの原因で血管内壁が狭くなったり、動脈の内側に発生した血栓もしくは脂肪の塊が血管内で詰まると、血流が阻害されてしまいます。
網膜にある血管で狭窄等が起こる場合もあれば、網膜にある血管以外の動脈で血栓や脂肪の塊が形成されて、血液に流され網膜にある血管まで流れ着く場合もあります。
特に高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満など全身の動脈硬化と関連のある持病を持っている方には起こりやすい疾患です。
いずれの場合においても、血栓や脂肪の塊が血流を阻害することが網膜動脈閉塞症を引き起こす要因となります。
原因2:網膜動脈での炎症・痙攣・血液の変化
網膜にある血管での炎症・痙攣・血液の変化なども原因となります。
血液の変化とは、血液中の成分や血流の変化のことを指します。また、血管の炎症や痙攣でも、動脈硬化と同様に網膜にある血管の詰まりが生じることがあります。
炎症や痙攣によって血流が阻害されると、網膜への酸素や栄養の供給が途絶えてしまい、網膜壊死等を引き起こします。
原因3:側頭動脈の炎症
こめかみを通る側頭動脈の炎症でも網膜動脈閉塞症が生じます。
側頭動脈に炎症が生じると、巨細胞性動脈炎という頭部や上半身の大動脈に慢性的な炎症を生じる疾患へと発展する場合があります。
巨細胞性動脈炎は眼動脈にも炎症を引き起こし、網膜への血液供給を阻害する可能性があります。
巨細胞性動脈炎が引き起こされる原因は不明とされていますが、リウマチ性多発筋痛症がある60~70歳代の女性に多くみられる疾患です。
側頭部の痛みとともに視力低下が見られたら、巨細胞性動脈炎にも注意が必要です。
網膜動脈閉塞症の症状
この疾患で引き起こされる症状は、詰まりが生じた部位により異なります。
動脈の中心での詰まり、中心からさらに枝分かれした先での詰まり等により、次のように分類されます。
網膜中心動脈閉塞症の症状
網膜にある血管の中心で閉塞が生じる網膜中心動脈閉塞症では、視力0.1以下になる等の著しい視力低下が見られます。
発症した直後は、眼底に浮腫が生じて視神経を萎縮・変性させます。
浮腫が改善された後も萎縮・変性した視神経が回復せず、視力予後が不良であるケースも少なくありません。
網膜動脈分枝閉塞症の症状
網膜にある血管の枝分かれした先で詰まりが生じる網膜動脈分枝閉塞症の症状としては、視野欠損が多くみられます。
黄斑に影響がなければ動脈自体の機能は維持されるものの、詰まりが生じた先の網膜が持つ機能だけが損傷されるためです。
詰まりが生じた血管により視野の欠損の生じ方も変わります。
たとえば視力には問題がないものの、部分的に足元だけが見えない、左側だけが見えないという症状が引き起こされます。
以上のように網膜動脈分枝閉塞症の症状では、視力低下を伴わない視野の欠損が特徴的です。
ただし、眼球の奥にある視力に大きく影響を及ぼす黄斑部に影響する血管で詰まりが生じた場合は、やはり著しい視力低下が引き起こされます。
網膜動脈閉塞症の治療方法
現段階では確立された治療法はありませんが、次のような治療が代表的です。
治療方法1:眼球マッサージ
応急処置としてすぐに行えるのが、瞼の上から眼球をマッサージし、血流の循環を改善させる治療法です。
網膜動脈閉塞症は血流が阻害されることで引き起こされるため、マッサージで直接血流の改善を図ります。
マッサージには房水の産生を抑える作用もあり、眼圧を下げる効果も期待できます。
眼圧が下がると閉塞の原因となっていた血栓が血液によって解放されやすくなり、網膜の損傷を最小限に抑えられる可能性があります。
このように手軽に実施できる治療法ではありますが、眼球マッサージだけで血流を再開させられることもあり、非常に有益です。
視機能の予後は治療の迅速さに左右されるため、すぐに行える眼球マッサージは第一の選択肢となるでしょう。
治療方法2:薬物療法
医療機関等においては、薬物療法も行われます。
使用される薬は、眼圧を低下させるための点眼薬や血栓溶解剤、網膜循環改善薬、高浸透圧利尿薬、ニトログリセリンなどです。
黄斑に浮腫が見られる場合は抗VEGF薬の硝子体注射・ステロイドテノン嚢下注射を実施することもあります。
用いられる薬物は、病態や患者さんの投薬状況などを考慮した上で決定されます。
治療方法3:レーザー治療
広い部位に血管の閉塞が見られる場合は、レーザー治療を実施することもあります。
レーザー治療は、低酸素状態になった網膜組織から新生血管が生じることを予防する効果があります。
新生血管は、弱く脆い異常な血管のことで、出血しやすい特徴があります。
新生血管が生じると増殖網膜症や合併症が引き起こされる可能性が高まるため、レーザー治療にて凝固を行います。
またレーザー治療には異常血管を防ぐ目的もあり、網膜周辺の血管を正常に保つため効果的な治療法といえます。
治療方法4:前房穿刺
前房穿刺とは、眼球の中の水分を摘出して眼圧を下げる治療のことです。
眼圧を下げることで網膜血管を拡張できるため、網膜動脈閉塞症においても比較的よく用いられる治療法です。
点眼薬にて麻酔を施したうえで、前房に針を刺して水分を摘出して眼圧を低下させます。
眼圧が下がると、網膜にある血管に生じた血栓や脂肪の塊が流れやすくなります。
網膜の損傷領域がなるべく少なく済むよう、必要に応じて行われます。
速やかな治療が必要
網膜動脈閉塞症とはどのような疾患なのか、またその原因や症状、治療法についてご紹介しました。
この疾患の予後は治療までの時間により左右されるため、異常が見られたら、速やかなマッサージの実施や治療を受けることが大切です。
当院では、高度な専門性を有する医療スタッフによる医療の提供を通じて、白内障を主体としつつ数多くの目の病気への治療に対応しております。
特に白内障の日帰り手術に注力しており、多焦点眼内レンズも豊富に取り扱っております。その他硝子体、眼瞼下垂、涙道、緑内障等の治療についても日帰り手術が可能です。
また、明石市のみならず近隣地域(神戸市西区、神戸市垂水区、淡路市等)にお住まいの患者さんからも多くの治療のお問い合わせをいただいております。
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