涙道の手術
2LACRIMAL DUCT SURGERY
涙の流れについて
涙は涙腺から分泌され、眼表面を潤し、まぶたの内側にある涙点から涙小管、涙嚢へと流れ、鼻涙管を通り、鼻の中へと流れ出ていきます(図1。涙点から鼻涙管までを涙道と言います)。
涙の流れは、水道で例えることができます。
蛇口をひねって水をだし、排水管から水が流れ出ていきますが、この排水管が涙道にあたります。
排水管も長年使用すると汚れがたまり詰まってきます。
排水管が一部狭くなったり、閉塞すると、水があふれてきます。治すためには汚れを実際とる必要があります。
涙管チューブ挿入術について
涙道が狭くなったり、閉塞してしまうと、流涙や眼脂を生じ、まぶたがただれることがあります。
また特に鼻涙管が長期間閉塞すると、涙嚢内に細菌が繁殖して膿がたまります。
涙管チューブ挿入術とは、涙道内視鏡という直径0.9mmのカメラを使用して、涙道内を掃除しながら、狭い部分を広げたり、閉塞した部分を開通させ、最後にチューブを挿入する手術となります。
ただし、涙道内視鏡は直径0.9mmと非常に精巧な手術器具であり、形状が決まっているため、涙道が強く屈曲している場合や、閉塞が強固な場合は内視鏡が折れるため、この手術は途中で終了となります。
この場合は、後日別の手術を検討する事となります。
涙管チューブ挿入術の手術の流れ
【1】麻酔
手術は局所麻酔で行います。涙の流れ道の出口が鼻内にあるので、麻酔はまぶたの他に鼻内にも行います。
【2】閉塞部分の開通
涙道内視鏡を使用し、涙道内を掃除しながら、狭い部分を拡げたり、閉塞している部分を開通させます。
【3】チューブ挿入
その後チューブを挿入し留置します(当院では涙道内視鏡で確認しながら行います)。
留置したチューブは、通常2ヵ月程度経過してから抜去します。
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所要時間
手術時間は10分から20分程度です。
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合併症や注意点
合併症としては、出血や感染、麻酔薬のアレルギーなどが考えられます。
また、閉塞していた部分が開通しても再度閉塞することもあります。
その場合、再度涙管チューブ挿入術を行うことにより治癒することもあれば、特に鼻涙管閉塞の場合は、別途新しく涙の流れ道を鼻内に作る手術(涙嚢鼻腔吻合術・るいのうびくうふんごうじゅつ)を行うことにより解消するケースもあります。手術後は涙道内にチューブを挿入しているため、強く鼻をかんだり、またまぶたの内側に入っているチューブをひっぱるとチューブが抜けることがあります。くしゃみも控えめにしてください。
涙嚢鼻腔吻合術について
体調をくずした際などに、涙嚢周囲の皮下組織に炎症を起こす事があります(蜂窩織炎と言います)。強い痛みを伴い、まぶたが腫れます。
炎症の程度によっては、抗生剤の点滴が毎日必要になることもあります。一度炎症を起こすと繰り返し再発する人もいます。
また、涙嚢に膿が貯留した状態においては、眼表面は不潔な状態であり、白内障手術や硝子体手術などの眼科の手術を行うことは好ましくありません。
涙嚢鼻腔吻合術とは、涙の流れ道と鼻内の間に流れ道を新しく作成する手術です。
虫歯の治療のために歯医者で歯を削ることがあると思いますが、同じように鼻の中から、涙の流れ道と鼻内の間にある骨を少しけずることにより新しい流れ道を作成します。特に鼻涙管閉塞に対して有効な手術と言えます。
術後、鼻粘膜が作成した流れ道にフタをしてしまうことがありますが、その場合は再度フタをとってあげることにより治療を行います。
まれに、ポンプ機能(涙の流れ道はまぶたの筋肉の力を使って涙を流しますが、その機能をポンプ機能と言います) の低下がある場合、手術後も涙目の自覚症状が残る事があります。ただし、この場合も涙嚢炎に関しては治療する事が出来ます。
涙嚢鼻腔吻合術の手術の流れ
【1】麻酔
手術は局所麻酔で行います。麻酔は、まぶたと鼻内にしっかり行います。
【2】涙嚢鼻腔の手術
その後、涙の流れ道と鼻内の間にある骨を一部削り、新しい涙の流れ道をつくります。
【3】チューブ挿入
そこにチューブを挿入・留置し、6〜10週間後に抜去します。
チューブの抜去は外来で短時間で終わります。
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所要時間
手術時間は20分から40分程度で、鼻の中を内視鏡で確認しながら手術しますので、他の組織を傷つけたりせずに行う事が可能です。
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合併症や注意点
合併症としては、出血や感染、麻酔薬のアレルギーなどがあります。
手術後は鼻血がにじむため、ガーゼを詰めてから手術を終了します。最後に挿入したガーゼは自分では抜かないようにしてください。
ガーゼは2~3枚つめており、1枚くらいは自然に落ちることもあります。その場合はそのまま放っておいて問題ありません。
術後に頭が重い感じや少し発熱することがありますが、適宜痛み止めを内服してもらい、数日でおさまるようなら問題ありません。
術後数日してからガーゼを抜きますが、1週間ほどは涙や鼻水がでやすい状態です。また、まぶたに麻酔をしますので、数日間まぶたが腫れたり、1-2週間ほど皮下出血が残ることもあります。涙道内にチューブを挿入しているため、強く鼻をかんだり、またまぶたの内側に入っているチューブをひっぱるとチューブが抜けることがあります。
くしゃみも控えめにしてください。
手術後1ヵ月ほどは鼻粘膜がうすく出血しやすい状態ですので、力まないようにしましょう。特に、力仕事は避けるようにしてください。
手術後の流れと注意点
術後について、一般的な流れをご紹介します。
涙管チューブ挿入術を受けられた方と、涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ・DCR)を受けられた方では術後の過ごし方が異なります。
参考にして頂き、最終的には医師の指示通り安全にお過ごしください。
涙管チューブ挿入術の術後
手術当日
- 抗菌剤・抗炎症剤の点眼が処方されます。指示通りに行ってください。
- 頓服の鎮痛薬が処方されます。痛みが出る場合のみ、服用間隔を遵守して内服するようにしてください。
- 涙道内にチューブが入っています。その間は強く鼻をかんだりせず、くしゃみも控えめにしてください。
- 首から下のシャワーは可能です。洗顔・洗髪は控えてください。
手術翌日
- 点眼・内服薬は指示通りに行ってください。
- 診察後、洗顔・洗髪が可能になります。あまり目や鼻をこすらないようにして行ってください。
~手術後2,3ヶ月目
- 点眼薬や術後診察は医師の指示に従ってください。
- 経過が良ければ、チューブ抜去を検討します。チューブを残す場合は、弱い抗菌剤・抗炎症剤の点眼を継続して頂く事があります。
手術後約4ヶ月目
- 通水検査を行い、問題なければ術後診としては終了します。以後の通院は医師よりご案内します。
涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ)の術後
手術当日
- 抗菌剤・抗炎症剤の点眼と、抗生剤・整腸剤の内服がそれぞれ処方されます。指示通りに行ってください。
- 頓服の鎮痛薬が処方されます。頭痛、喉の奥の痛み、37.5度以上の発熱がある場合は、服用間隔を遵守して内服するようにしてください。
- 帰宅後、弱い鼻血はしばらく続きます。鼻先に綿球や小さく丸めたティッシュ等を置いて、適宜交換してください。万一出血が口の中に流れてくるようであればご連絡ください。
- 涙や目脂が出て、目頭が赤く腫れる事もあります。通常、1週間後の鼻のガーゼ抜去後を行った後には落ち着いてきます。
- 鼻にガーゼが3枚入っていますが、自分で抜かないようにしてください。まれに自然に抜け落ちる事がありますが、1枚であれば問題ありません。
- お風呂やシャワーは行えません。翌日まで安静に過ごしてください。
- 涙道内にチューブが入っています。その間は強く鼻をかんだりせず、くしゃみも控えめにしてください。
- 術後1ヵ月間は、力仕事は行えません。術後すぐの鼻粘膜は薄く、鼻血が出やすい状態になっているためです。
手術翌日
- 点眼・内服薬は指示通りに行ってください。
- 診察後、洗顔・洗髪が可能になります。あまり目や鼻をこすらないようにして行ってください。
手術後2日目
- 点眼・内服薬は指示通りに行ってください。
- ガーゼを1枚抜去します。
手術後5~7日目
- 点眼・内服薬は指示通りに行ってください。
- 点鼻薬が処方されたら、指示通りに行ってください。
- ガーゼを取り除き、通水テストを行います。しばらく鼻先に綿球や小さく丸めたティッシュを置いて過ごしてください。
手術後1~2ヶ月目
- 点眼・内服薬・点鼻薬は指示通りに行ってください。
- 経過が良ければ、チューブ抜去を検討します。チューブを残す場合は、弱い抗菌剤・抗炎症剤の点眼を継続して頂く事があります。
- 力仕事は慎重に再開してください。
手術後約4ヶ月目
- 通水検査を行い、問題なければ術後診としては終了します。以後の通院は医師よりご案内します。
手術後、万一何か変わった事があれば、予約日を待たず出来るだけ早く診察を受けてください。
術後2週間は、夜間も繋がる緊急連絡先番号をお伝えしています。わからない事やご不安な事がある場合は、お気軽にご相談ください。
手術費用の目安とお支払いについて
標準的な手術費用の目安は以下の通りです。手術費用は、使用薬剤等によっても増減します。
※民間の医療保険については、契約内容・条件等により個々に事情が異なるため、必ずご自身で保険会社へご確認下さい。当院では民間保険についての責任は一切負いかねます。
涙管チューブ挿入術
1割 片眼:5,690円
2割 片眼:11,370円
3割 片眼:17,060円
涙嚢鼻腔吻合術(るいのうびくうふんごうじゅつ)
1割 片眼:26,060円 (例:後期高齢者一般の方の負担上限は月18,000円)
2割 片眼:52,110円 (例:70歳以上75歳未満一般の方の負担上限は月18,000円)
3割 片眼:78,170円
※後期高齢者医療制度や高額療養費制度等により、毎月の窓口でのお支払い額には一定の上限が設けられています。
例1:後期高齢者医療制度対象(通常75歳以上)で、自己負担額が1割、所得区分が一般の方が、同月内に両眼手術を受けられた場合、当院での窓口負担(保険診療分)の上限額は合計で18,000円となります。同月内においては、窓口でそれ以上のご負担分はありません。
例2:前期高齢者医療制度対象の70歳以上の方で、自己負担額が2割、所得区分が一般の方が、同月内に両眼手術を受けられた場合も、当院での窓口負担(保険診療分)の上限額は合計で18,000円となります。同月内においては、窓口でそれ以上のご負担分はありません。
例3:69歳までの方で限度額適用認定証を発行された方は、医療機関での一時的な高額支払いを軽減できます。あらかじめ市役所やお勤め先の担当者の方へお問い合わせください。手術日までに発行が間に合わなかった場合でも、後から保険者に申請を行って、自己負担額を超えたお支払額については払い戻しを受ける事もできます。
上記以外にも多様な保険制度が存在するため、個人ごとに費用・上限額が異なります。詳しくは個別にご案内しておりますので、どうぞお気軽にご相談下さい。
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