医療法人瞳潤会 田村眼科

網膜前膜(黄斑上膜)

5EYE DISEASE

明石イメージ

網膜前膜(黄斑上膜)とは

目の奥の網膜と、その中心にある黄斑、さらにその黄斑の中心である中心窩は、視力に最も関係する部分です。
網膜前膜(黄斑上膜・黄斑前膜とも呼ばれます。以下網膜前膜と総称します)とは、これら網膜や黄斑の表面に繊維のような薄い膜が出来る疾患をいいます。
進行すると、物がゆがんで見えたり(歪視・変視症)、物が大きく見えたり(大視症)、かすんで見えたり(霧視)、視力が低下するといった自覚症状が現れます。

診察時、手術の適応と思われる場合はきちんと説明をさせて頂きます。あわてる必要はありませんので、適切な時期に、計画的に治療を行いましょう。

網膜・黄斑・中心窩について

【画像】網膜とカメラ_Copyright ®iCeye

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目の構造はよくカメラに例えられます。白内障手術が行われる「水晶体」がカメラのレンズに相当するとすれば、「網膜」はカメラのフィルムにあたります。
網膜は、目から入ってきた光を受けて脳へ伝えるという、非常に重要な役割を担っているのです。

もう少し詳しく述べると、目に光が入ってきた時、その光は目の前の方の部分から順に、角膜、前房、水晶体、硝子体を通り抜けて網膜に到達します。


【画像】視細胞_Copyright ®iCeye

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網膜は光を受けると、視細胞という神経細胞で認識しその光を電気信号に変換します。電気信号は神経線維へ伝わり、神経線維が集まる視神経を経て、大脳へと伝わっていきます。
視細胞には、物や色を見分ける錐体細胞と、明暗を判断する杆体細胞があります。


【画像】黄斑と中心窩_Copyright ®iCeye

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ではなぜ、黄斑や中心窩が視力にとって最も重要なのでしょうか。
それは、前述の視細胞が直径2mm程度の黄斑部に密集して存在している事に起因します。
さらにその黄斑の中心である直径0.3mm程度の中心窩には、錐体細胞のみが存在する事によって、最も視力が出る部分となっているのです。

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自覚症状とその確認方法

多くの方で物がゆがんで見える症状(歪視・変視症)が現れはじめます。その他にも大視症、霧視、視力低下等を自覚します。

歪視・変視症の一例

本来は直線であったり、なだらかなカーブを描いているものが、写真のように歪んで見えます。

【画像】変視症

自覚症状の確認方法(アムスラーチャート)

アムスラーチャートとは、眼科検査でよく使われる方眼紙のようなマス目の用紙です。中心に黒い印があり、これを30cmの距離から片目ずつ見て確認します。
もし直線に見えなかったら、黄斑部の疾患を疑います。

ご自宅になくても、5mmの方眼紙で代用できます。
ゆがんで見えたり、見えない箇所がある等、何か異常があればなるべく早く眼科を受診してください。

【画像】アムスラーチャート__Copyright ®iCeye

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初期のうちは自覚症状が無い場合があります。例えば片目に疾患があっても、両目で見ると補完し合ってしまうので、自分では疾患に気付きにくいという事があり得ます。
セルフチェックを行う時は、必ず片目ずつ確認してください。

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網膜前膜の原因

特発性(後部硝子体剥離等)

よくある原因として、後部硝子体剥離という加齢による現象が挙げられます。
誰しもに起こるため予防する事は出来ません。
中でも、近視が強い方は若年齢から発症しやすいと言われています。

それでは、後部硝子体剥離とはどのような症状でしょうか。

【画像】硝子体_Copyright ®iCeye

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通常、目の中のおよそ3分の2は、硝子体という無色透明なゼリー状の物質で満たされています。

硝子体は99%以上の水と、微量の繊維物質等で構成されています。硝子体の後部と網膜は密着している状態です。


【画像】後部硝子体剥離_Copyright ®iCeye

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しかし、年齢を追うごとに水と繊維は分離して、硝子体は液状化し収縮します。

その際、後部硝子体と網膜の間で強い癒着があった部分がきれいに剥がれず、網膜の上に硝子体が少し残ってしまう場合があります。
これが原因となって網膜前膜が形成され、その後増殖変化が起こっていく事があるのです。

続発性(糖尿病網膜症、網膜剥離等)

続発性とは、他の原因疾患によって引き起こされる事を指します。
例えば糖尿病網膜症、網膜裂孔や網膜剥離、ぶどう膜炎、網膜静脈閉塞症等の虚血疾患、またその術後等で起こる場合があります。

これらの疾患では炎症等による細胞の増殖が起こるため、その結果網膜前膜が形成されると考えられます。
若年者で後部硝子体剥離が認められない場合等では、原因となっている疾患がないかどうかも見極める必要があります。

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網膜前膜の手術について

以下はおおまかな概要となります。
詳細は「硝子体手術」のページ(こちらをクリック)にてご確認ください。

手術の流れ

麻酔をします

点眼麻酔、球後麻酔にて痛みがないようにしっかりと前処置します。
局所麻酔のため、手術中であっても最小限の会話は可能です。万一痛みがある時は伝えてください。


白内障と同時手術を行う場合があります

白内障手術も同時に行った方が良いと判断された方には、手術決定前にご説明の上で、同時手術を行います。
先に水晶体の濁りを取り除いてから、網膜前膜の手術に移ります。


硝子体への入口を作成します

眼内にアプローチするため、極めて小さい3つの入口(ポート)を作成します。
そこからいくつかの手術に必要な器具が挿入される事になります。


網膜前膜の手術

まず硝子体を取り除き、次に網膜前膜をピンセットのような器具で剥がします。非常に繊細な手技です。
症状により、目の中にガスや空気を入れたり、レーザー光凝固を行う場合もあります。


白内障と同時手術の場合は、眼内レンズを挿入します

網膜前膜を取り除いた後、予め度数を合わせた眼内レンズを挿入します。


硝子体への入口を閉じます

最後に3ポートを取り外し手術を終了します。手術後は、医師の指示に従って過ごしてください。

手術時間は症状により異なりますが、およそ15分~30分程度です。
手術前に丁寧に説明を行わせて頂き、術後もしっかりとサポート致します。

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