中心性漿液性脈絡網膜症
11EYE DISEASE
目次
中心性漿液性脈絡網膜症とは?
中心性漿液性脈絡網膜症とは、網膜の中心部分にある黄斑と呼ばれる部分に漿液が溜まり、網膜剥離が起こる病気です。
特に30~50代の男性に多く見られます。片方の目のみに発症する傾向がありますが、期間を空けてもう片方の目にも現れるケースがあります。
再発を繰り返すこともあるので注意が必要です。
またこの病気は、急性びまん性ぶどう膜炎の一種である原田病や、黄斑に障害が生じることで発生する黄斑変性症などと類似しています。そのため、慎重に検査を行ったうえで、診断されることになります。
中心性漿液性脈絡網膜症の検査・診断
まず、眼底三次元画像解析(OCT)や、近年では光干渉断層血管撮影検査(OCTアンギオグラフィー)等を行って網脈絡膜や血管の状態を確認します。
当院ではSS-OCTを採用しており、より詳細な検査が可能です。
また、フルオレセインやインドシアニングリーンといった造影剤を用いた蛍光眼底造影検査で診断を確定する場合も多く、加齢黄斑変性症等との判別も重要になります。
中心性漿液性脈絡網膜症の原因
直接的な原因は、視力と大きく関係している黄斑と呼ばれる部分に漿液が溜まってしまい、一部分のみ網膜剥離が起こることにあります。漿液とは、脈絡膜を流れる血液中の水分(分泌液)で、黄斑部に栄養のほか、酸素などを届ける役割を持っています。
なぜ漿液が溜まるのかといった具体的な原因に関しては、まだわかっていない部分が多いです。
代表的なものとして考えられるのがストレスで、溜め込んだ時に発生しやすいとされています。中心性漿液性脈絡網膜症は特に30~50代の男性に多いとご紹介しましたが、この世代は働き盛りでストレスを感じやすい世代であることも理由の一つです。普段からストレスを溜め込みやすい方は、一度ご自身の生活を見直して、できる対策は講じていく必要があります。
また、妊娠時にも起こりやすいほか、副腎皮質ステロイド薬の副作用として発生することも多いため、この状況に当てはまる場合は注意が必要です。
網膜色素上皮の機能低下が関連している
黄斑に漿液が溜まる原因は、網膜色素上皮の機能低下によるものです。目にはたくさんの血管が集まっている脈絡膜(みゃくらくまく)と呼ばれる組織があります。
いくつかの層で構成されている網膜のうち、最も脈絡膜に近いのが、網膜色素上皮層です。網膜色素上皮層は、網膜に異物が入り込むのを防ぐバリア機能を持っています。
しかし、この機能が低下してしまった場合、本来であれば網膜に入り込むはずがなかった漿液が流れ込んでしまい、中心性漿液性脈絡網膜症につながってしまうのです。バリア機能がなぜ低下するのかについては、まだ解明されていません。
そのため、この病気は予防しようと思っても、なかなか対策などが難しいのが現状です。
中心性漿液性脈絡網膜症の症状
この病気が発生すると、さまざまな症状が現れるようになります。
ここではその中でも代表的なものを取りあげて解説していきます。
症状1:視力の低下
原因は黄斑に水が溜まって網膜剥離が引き起こされることにあるのですが、黄斑は視力と関わりが深い部分です。そのため、中心性漿液性脈絡網膜症が起こった場合、視力低下が引き起こされます。
自然に軽快するケースを想定して経過観察する場合もありますが、定期検診をしっかりと受けることがとても重要です。
剥離の状態やその期間によっては、視力や見え方が元通りにならない恐れもあります。
特に経過が長引いた際にはそのリスクが高いので注意が必要です。
症状2:中心暗点
中心暗点とは、視野の中でも中心部分が暗く感じてしまうような症状です。中心性漿液性脈絡網膜症を引き起こす黄斑部は、網膜の中央部分にあります。そのため、中心性漿液性脈絡網膜症が発生すると視野の中でも中心辺りが暗く感じてしまうことがあります。
症状3:小視症
小視症とは、実際よりも、ものが小さく見えてしまう症状のことをいいます。
加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫が小視症を引き起こすこともあるのですが、特に中心性漿液性脈絡網膜症の場合に小視症の症状が現れやすいです。
症状4:変視症
変視症とは、ものが歪んで見える症状のことです。これは、黄斑部の腫れによって引き起こされます。
症状5:色覚異常
色覚異常は対象物が実際の色と異なる色に見えてしまう症状です。場合によっては色の区別が付きにくくなってしまうことがあります。
症状6:遠視
遠視とは、通常よりも奥で焦点を結んでしまう状態です。遠視では、目をリラックスさせた状態でも、はっきりものを見ることができません。
また、見るときも近くを見るときもピント調整をしなければならず、疲れやすくなってしまうのが特徴です。
特に近くを見るときのピント調節が大変です。これは、眼底部が腫れ、網膜が押し出されてしまうことによって発生します。
中心性漿液性脈絡網膜症の治療方法
特別な治療をしなくても時間の経過とともに良くなるケースがあるため、他に何か気になる症状がない場合は様子をみることもあります。しかし、一定期間待っても症状が良くならないような場合は経過観察から治療に切り替えることもあります。
医師とよく相談の上、しっかりと検討しましょう。
治療方法としては以下のようなものが挙げられます。
治療方法1:レーザー治療
中心性漿液性脈絡網膜症は、何らかの理由によって漿液が漏れ出して起こるトラブルです。
そのため、漿液が漏れている部分にレーザーを照射し、凝固させることによって症状の改善が期待できます。
再発する心配もあるのですが、レーザー治療を選択することができれば、再発の予防につなげることも可能です。治療を行ってからしばらくすると、網膜色素上皮のバリア機能が改善していき、数週間ほどで自覚症状がみられなくなっていきます。
レーザー治療を行えるかどうかについては、黄斑の中心から離れているか等の状況によって判断されるため、まずは詳細な検査が必要です。
しかしレーザー治療を行えば、必ず改善するというわけではありません。場合によっては血管の異常が発生することもあるため、治療を行ったあとは経過を見つつ定期的な眼底検査が必要です。
▶レーザー治療ができないケース
代表的な治療法はレーザー治療ですが、例えばどこから漿液が漏れ出しているのか特定できないような場合、この治療を選択することはできません。
他にも、黄斑の中心から漿液が漏れ出しているような場合、レーザー治療は難しくなります。
黄斑の中心には、中心窩(ちゅうしんか)と呼ばれる非常に敏感な部分があり、視力と深く関係しています。万が一、中心窩がレーザー治療で機能性を失ってしまうと、視力が大幅に低下してしまいます。こういった危険性があるため、中心窩付近から漿液が漏れている場合のレーザー治療は難しいです。
治療方法2:薬物治療
レーザー治療が難しい場合や、治癒を促進するような目的で行われるのが薬物治療です。
色素上皮のバリア機能低下を改善する効果が期待できる末梢循環改善薬や、漿液を早くひかせる目的で蛋白分解酵素薬が使われることがあります。
一度診察を受けましょう
中心性漿液性脈絡網膜症についてご紹介しました。経過確認でも徐々に良くなることが多いのですが、視力低下につながる恐れもあるので場合によっては治療が必要です。症状がある場合は眼科の検診を受けましょう。
当院では、高度な専門性を有する医療スタッフによる医療の提供を通じて、白内障を主体としつつ数多くの目の病気への治療に対応しております。
特に白内障の日帰り手術に注力しており、多焦点眼内レンズも豊富に取り扱っております。その他硝子体、眼瞼下垂、涙道、緑内障等の治療についても日帰り手術が可能です。
また、明石市のみならず近隣地域(神戸市西区、神戸市垂水区、淡路市等)にお住まいの患者さんからも多くの治療のお問い合わせをいただいております。
目の病気にお悩みの方や、治療をご検討中の方はぜひ一度兵庫県明石市の田村眼科までご来院ください。