
先天性白内障
幼い子供に発症する危険性がある目の疾患の一つに「先天性白内障」があります。
視力に関わる重大な疾患であり、早期段階での治療が肝心です。
また、一刻も早く疾患を見つけるためには、両親の十分な知識が鍵となります。
そこで本記事では、先天性白内障の症例・症状や原因、治療法などを紹介します。
正しい知識を身につけて、子供の健康で安全な生活を守りましょう。
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目次
先天性白内障とは
ここではまず、先天性白内障の特徴や症学、種類を見ていきます。
概要

先天性白内障とは、出生時または出生直後の早期段階で、水晶体が透明性を失い白く濁る疾患です。
一般的に、成人でも白内障を患うリスクがありますが、先天性白内障は新生児・乳幼児が患う白内障と捉えられます。
意思表示が限られる幼い子供に、痛みを伴わずに現れるため、発見には親の注意深い観察が不可欠です。
また、出産後の定期的な眼科検診も怠らず受診しなくてはなりません。
症例
難病情報センターによる「眼科疾患 先天白内障(平成23年度)」によれば、年間約200件の新規患者が確認されています。
約3千人に1人に起こる稀な病気とも言えるでしょう。
72%が手術を受けているものの、視覚刺激に対する反応が強い早期段階での手術は3分の1にとどまり、早期発見・治療の難しさが伺えます。
また、先天性白内障は両眼性のケースが多く見られますが、中には片眼性の発症も起こり得ます。
出生時に既に発症していることもあれば、小児期に出現・進行する発達性白内障も存在するため、定期的な検診が欠かせません。
種類
先天性白内障は、白濁する部位によりいくつかの種類に分けられます。
▶前極白内障
目の水晶体の前側に白い濁りがはっきりと見えます。
遺伝形質に関連があるとされ、サイズが小さく、外的治療を特に行わないケースが一般的です。
▶ 後極白内障
目の水晶体の裏側が白く濁り、前極白内障と同様、はっきり確認されます。
後極白内障の手術後の合併症として、水晶体嚢の後方である後嚢の破損が起きやすいです。
▶ 核性白内障
先天性白内障で最もよく見られる形態で、水晶体の真ん中に白濁が見られます。
▶ 青色白内障
水晶体の中に青い小さな点が確認される白内障の一種です。
通常、乳児の両目に見られ、視力に大きな問題はありません。
部分的な(限局性)白内障では、10歳までに混濁が始まり、視力は比較的良好です。
先天性白内障の症状
先天性白内障の症状は、瞳孔領の白濁から始まり、重い視力障害にまで至ります。
目が揺れる眼振や、片目の視線がズレる斜視は、弱視の症状の一種です。
重度の両眼性先天白内障では、生後10週以降に眼振や目の異常な動きが目立つようになります。
また、片眼性では生後3.4ヶ月で白内障の方の目が斜視になる場合があります。
先天性白内障患者の3分の1が眼合併症、4分の1が全身合併症を伴う傾向が大きいです。
眼合併症には、斜視・眼振・異常眼球運動に加え、色彩異常、胎生血管異常、前眼部異常、後眼部異常などが挙げられます。特に、重い先天性白内障では、小角膜や小眼球などの症状も見られます。
また、多発奇形、代謝異常、風疹などの胎内感染症は、全身合併症の例です。
先天白内障の術後にも、後発白内障や緑内障、網膜剥離などの合併症のリスクが否めません。
先天性白内障の原因
先天性白内障では、目の水晶体の構造蛋白クリスタリンが変質し、透明性を欠きます。
水晶体の形態形成遺伝子やクリスタリンを含む構造蛋白遺伝子に変異が起きることによって発生すると考えられますが、原因の詳細は未だ不明です。
先天性白内障は、遺伝や感染、代謝異常などのあらゆる発症要因が考えられます。
散発性から孤発性の家族性先天異常など、ケースも様々です。
常染色体優性遺伝、染色体異常、眼球の他の形成異常や胎内感染症(風疹・トキソプラズマ・単純ヘルペス・インフルエンザなど)、代謝異常疾患に合併するパターンも見られます。
母親が妊娠中に風疹にかかると全白内障になるリスクが高いですが、近年は風疹ワクチンの普及により、発症数が減少しています。
先天性白内障の治療法
先天性白内障が発見されると、形態と濁りの程度、合併症の有無の判断をして、適応可能ならば手術を行います。
手術では、角膜輪部から機器を挿入し、白濁した水晶体と硝子体前部を取り除きます。
術後も定期的な検診を行いつつ、手術で組み込まれた眼内レンズ(IOL)やコンタクトレンズ・無水晶体用眼鏡による視力矯正が必要です。
症状が重い先天性白内障では、早期発見・手術と視力矯正・弱視訓練が欠かせません。
両眼性では生後10~12週、片眼性では6週までの手術が推奨されます。
1~2歳の進んだ白内障では、視覚誘発電位をとることで、手術によって視力の発達が期待されるか否かを評価し、合併症のリスクが無いことが確認されたら、成人の場合と同様に眼内レンズ挿入術を行います。
ただし、成長により眼内レンズの度数が合わなくなったり、再手術や合併症の頻度が高く、視力が安定しづらかったりと懸念点も多いです。
片眼性や左右差が見られる先天性白内障の際は、術眼の像の質に差が出ます。
そのため、良い方の目をアイパッチで覆い、悪い方の目を強制的に使うことによって視力を上げる弱視訓練が外せません。
良好な視力を得るためには、視覚刺激に対する感受性が強い0~2歳時の早期治療が重要です。
成人が患う白内障と異なり、先天性白内障は、早期手術を受けないと重度の弱視が発生してしまいます。
兄弟や両親に先天性白内障患者がいる場合は、生後すぐに眼科を受診すべきでしょう。
前提となる白内障についても理解しましょう
本ページでは幼い子供が発症する可能性のある先天性白内障に焦点を宛てて紹介をしましたが、白内障のリスクは高齢の方を中心に、幅広い世代が抱えていると言えます。
そもそもの白内障の概要やその他の白内障の種類、実際に田村眼科で日帰り手術をする際の手術の流れなどについて知りたい方は、コチラの「白内障とは」の記事をご覧ください。
先天性白内障は早い段階での発見・治療が肝心
本記事では、先天性白内障の要因や症状、種類、治療法などを解説しました。
幼児期の疾患は周りの大人が注意深く観察し、早期発見することが重要です。
また、違和感を抱いたらすぐに受診し、専門医による治療と長期にわたる経過観察を抜かりなく行いましょう。
当院では、高度な専門性を有する医療スタッフによる医療の提供を通じて、白内障を主体としつつ数多くの目の病気への治療に対応しております。
特に白内障の日帰り手術に注力しており、多焦点眼内レンズも豊富に取り扱っております。その他硝子体、眼瞼下垂、涙道、緑内障等の治療についても日帰り手術が可能です。
また、明石市のみならず近隣地域(神戸市西区、神戸市垂水区、淡路市等)にお住まいの患者さんからも多くの治療のお問い合わせをいただいております。