選定療養対象の新しい多焦点眼内レンズ「TECNIS PureSee」
Johnson & Johnson(AMO JAPAN)より、選定療養対象の新しい多焦点眼内レンズ「TECNIS PureSee」が登場しています。
現時点においては最も後発の製品であり、患者さんのニーズや適応によってはとても優れた選択肢となり得ます。今回、導入に伴い院内勉強会を開催してスタッフ全体の理解も深まりましたので、情報を共有させて頂こうと思います。
新製品パッケージ外観 © Johnson & Johnson K.K.
ピュアシーは、非回折型、焦点深度拡張型の多焦点眼内レンズです。
回折格子を持たない非回折型のため、光の散乱はかなり低減されています。例えば夜間に街灯や対向車の光などを見た時に気になる「異常光視症(ハロー・グレア・スターバースト)」と呼ばれる現象が起こりにくいので、特に運転をする方にとっては大きなメリットとなります。
IOL外観。表面等は単焦点レンズと区別がつかない
光視症について、ピュアシーと他の眼内レンズを比較したイメージデータがあります。中央が「ピュアシー」、左は2017年発売の多焦点レンズ「シンフォニー」、右は単焦点眼内レンズです。 ピュアシーは、右側の単焦点眼内レンズに迫るプロファイルを実現していることが確認できます。
長らく多焦点レンズのデメリットとされてきた異常光視症ですが、回折型(Alcon PanOptix、HOYA Vivinex Gemetric、J&J Odyssey等)であれば、そのメリットと引き換えに構造上少なからず発生し得るものでした。最近の研究データによれば、明所や薄暮時における患者さん自身の瞳孔の大きさ(瞳孔径)の変化や、各レンズごとに異なる回折の幅(回折径)によっても、形を変えながら様々な見え方と強度で現れてしまうことがわかっています。
その一方で、近年登場したAlcon社の波面制御技術 X-WAVEテクノロジー採用IOL「Clareon Vivity(ビビティ)」や、今回ご紹介のOptiCurveテクノロジーを有するピュアシーの登場によって、一定の解決策が提示される形となったのは喜ばしいことです。
夜間光視症プロファイルは単焦点眼内レンズと同等とされる © Johnson & Johnson K.K.
続いて、優れたコントラストについてもピュアシーの大きな特徴となっています。
メーカー調査に基づくものではありますが、眩しい環境下であっても単焦点眼内レンズに迫るコントラスト感度を実現しています。また、遠方イメージコントラストは瞳孔径の大小にかかわらず優れているというデータも出ています。
ここで改めて考えてみて頂きたいことがあります。もしみなさんが対象物をくっきりはっきり見たいのであれば、焦点が合っているかどうか、視力がどうかが最も重要なポイントになるはずです。しかし、それが実物よりくすんだ色で見えていたらどう思われるでしょうか。それでも良いという方もいれば、それよりも色が鮮やかに見えた方が良い、という方も少なからずおられる事と思います。
風光明媚な自然を目の前にした時、草花や樹木の1本1本がはっきり見えながらも色褪せて見える状態と、少しぼやけているが鮮烈な色が見えている状態ではどうでしょうか。また、視力検査をする時、ランドルト環がグレーに見える状態と、真っ黒に見える状態ではどうでしょうか。これらは、「見える」ということは視力だけでは語れない事の、典型的な例と言えるかも知れません。
優れたコントラストも視機能にとって重要な要素 © Johnson & Johnson K.K.
次に、焦点深度拡張(EDOF)の新しい手法についてです。
ピュアシーは、回折型多焦点レンズはもちろんの事、従来の屈折型多焦点レンズとも大きく異なる特徴を有しています。パワーを連続的に変化させる独自の屈折技術「OptiCurveテクノロジー」によって、光学部表面に屈折領域(ゾーン)を設けることなく、遠方から中間距離を中心としながらある程度の近方までも焦点深度を拡張しています。
通常目視できるレンズ中央の加入部分は、ピュアシーでは見分けがつきません。
従来の回折型・屈折型と比べ、光学部の仕組みが大きく異なる © Johnson & Johnson K.K.
以上のように、ピュアシーは様々な優れた特徴を持つ多焦点眼内レンズです。しかし、良い事ばかりではありません。
まず非回折型EDOFレンズであるために、近方視については過度な期待は出来ません。通常は、近くをはっきり見たい場合には眼鏡が必要な事が多いでしょう。眼鏡の依存度を下げたい方は、両目のターゲット差を敢えて設けることによって遠くから近くまでをカバーする方法(モノビジョン法)や、左右の目にそれぞれ異なる特徴を持つ眼内レンズを挿入する方法(Mix & Match ミックスアンドマッチ)などを組み合わせる事も検討材料となります。
また、選定療養対象とはいえレンズ代は自己負担のため、手術費用は高額となります。これは本製品に限ったことではありませんが、多焦点眼内レンズを希望される方は一定額のお支払いが必要です。
保険診療内で費用負担を抑えたい場合は、同社の強化型単焦点眼内レンズ「TECNIS Eyhance(アイハンス)」という選択肢もあります。本製品とは全く異なることを予め申し上げておきますが、単焦点レンズでありながら深度拡張機能を持ち、遠方から中間距離くらいまでは明視域を広げることが可能で、単焦点に近いコントラストや異常光視症の低減を目指せます。しかし、近方視力についてはピュアシーより更に弱めの出方となることが一般的です。
明石の田村眼科では、本記事に挙げた眼内レンズは全て取り扱っています。患者さんのニーズや適応の有無に沿って、最適なレンズを選定出来るようコンサルテーションや様々な検査を行います。ご不明な点やご質問がございましたら、どうぞお気軽にご相談下さい。
